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全額供託への過度な期待に注意
もちろん、暗号資産交換業への登録も第三者型前払式支払手段への登録も、JPYCの発行者である日本暗号資産市場(株)が金融庁の審査を通過できる体制を整えればクリアすることができる。前述したようなリスクについては当然検討した上でサービス開始に踏み切っているはずであるから、リスクが顕在化したからといって必ずしもJPYCが終了してしまうとは限らない。
しかし、サービス開始時点では登録を回避する選択をしていることから、少なくとも現時点では同社にとって荷が重いことであるのは間違いないだろう。
では仮にJPYCのサービスが終了してしまうとどうなるのだろうか。
同社は未使用残高の同額以上を供託するとしており、そうであるならば仮に同社が倒産したとしても全額が帰ってくるように思われる。
当面は資金決済法に定められた供託金の 200 %+ 1000 万円を法務局に供託いたします。供託金額が増加した場合は供託後に当社 Web ページ 等にて告知します。
引用元:JPYCoin(JPYC) White Paper
しかしここには重要な一語が付け加えられている。「当面は」だ。
同社は永遠に全額以上の供託を保証しているわけではない。加えて、「供託金額が増加した場合は供託後に当社 Web ページ 等にて告知します 」とある。減額の場合は必ずしも告知するとは言っていない。供託金はいつでも減らせるのだ。
つまり、JPYCが事実上の元本保証であるかのよう考えるのは誤認だ。
騙すような書きぶりだと感じる人もいるかもしれないが、同社の名誉のために言うならば、そうではない。これは金融の話であり、事実は正確に記述されており、金融の仕組みとはえてしてこういうものだ。提供されている情報を読み取るのは利用者側の責任なのだ。
まとめ
今回の記事では、JPYCの法的位置づけには危うさがあることを整理した。JPYCが元本保証ではないことは発行者自体が明言しており、そして供託による事実上の元本保証があると考えるのも誤認だ。
しかしこれらはあくまでもリスクの話である。何事にも正と負の側面があるように、JPYCにも優れたメリットと大きな可能性が秘められている。そうした明るい面については、発行者自身や、その他のブログ等でも多く語られているのでそちらに譲りたい。
さて、どのようなサービスにも、民間企業である以上は利益を出すための仕組みがある。それがあるからこそ事業は継続でき、我々は継続して利用できる。JPYCにもそれが当然あるだろう。
そもそもステーブルコインとは何のために発行されるのか。発行者側のねらいは何なのだろうか。その点については次回の記事で考察していきたい。
繰り返しになるが、筆者はJPYCの取り組みに反対するものではない。むしろ国産仮想通貨を愛する一人としてJPYCの成功と発展を切に願っている。そしてそれは、利用者の間で十分にリスク認識が醸成された上に達成されるべきだと思うのだ。
この記事が何かの参考となれば幸いである。
JPYCは自家型前払式支払手段として届出済と記載しておりましたが、正しくは未使用残高1,000万を超えた段階で届出予定でした。お詫びして訂正いたします。
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KT情報ポータル運営事務局 代表・アルファ情報ポータル編集長
2018年初頭に仮想通貨と出会い、同年4月に国産コインSanDeGoの立ち上げに遭遇。以降、仮想通貨を取り巻く熱狂とバブル崩壊を目の当たりにし、「コインで持続的な楽しさを提供すること」を軸に国産コインの普及活動に邁進。SanDeGo情報ポータル、アルファフォーセット、AlphaAdService、アルファDiscord等のサービスを運営。